いわゆる飲む日焼け止め(日焼け止めサプリ)といわれている商品は、スペイン発祥のフェーンブロック(シダエキスシダ抽出物、Polypodium leucotomos、以下PL)や、ニュートロックスサン(ローズマリー&シトラスエキス)配合商品が有名ですよね。
飲む日焼け止めで効果があったという写真つき報告もあるため、本当なのだろうか?と迷うことがあると思います。
そこで、最新の論文などを参考に、実験写真も考慮しつつ、飲む日焼け止めサプリの効果を深掘りしてみました。
目次
飲む日焼け止めの効果を示した実験写真
(以下、2021年4月23日時点ではリンク切でした)
こちらがいわゆる飲む日焼け止め「noUV」で効果があったとされる写真です。
noUVは、PLを配合した商品で、日本で有名なサプリですね。
【「noUVを飲んだとき」と「飲まなかったとき」での比較実験!】
①まず、被験者が全身服を着た状態で、左腕(noUVなしとマジックで書いてある方)のみ腕をまくり、20分間照射。
この時ほかの部分は布で隠し、日焼けしない状態に。②20分後、日焼け部位が日焼けしているのを確認し、被験者がnoUVを1粒飲む。
③その後、サプリが体に取り込まれるまで時間(30分)をあけ、今度は右腕(noUVありとマジックで書いてある方)の腕をまくり、20分照射。
この時、左腕は先ほどと同様に布で隠し、日焼けしない状態に。引用:https://gorilla.clinic/cms/informationnews/nouv_testreport/
記事の記載元は、ゴリラクリニックというメンズクリニックであり、noUVと関連があることがわかりました。
- ゴリラクリニック・・・東京イセアクリニックの男性脱毛事業が独立してできたクリニック
- noUV・・・東京イセアクリニックの医師が監修したサプリ
ということで、この記事はnoUVのPR記事ともとれますね。(2021年4月23日現在、記事が削除されたようで確認できませんでした)
さて、上記の実験結果が一定の紫外線量を適切に照射したと仮定すると、普段20分で日焼けする人が、noUVを飲むことで20分は日焼けしなくなったということがわかります。
しかし、この効果は、塗る日焼け止めと比べた時に、どれくらいの効果と言えるのでしょうか?
飲む日焼け止めのSPFはどれくらい?
その前に、SPFについてお話しします。
通常の塗る日焼け止めのSPFを計測する際は、ISO24444(参考:紫外線防御効果測定法に関する最近の動向について)という国際ルールに従って算出します。
簡単にいうと、日焼け止めを塗る前後で、どれくらいの紫外線をあてたら赤くなるか?という最小のエネルギー量(MED)を求め、それらを割り算して算出します。
例えば、日焼け止めを塗る前に、100というエネルギーの紫外線をあてると、わずかに焼けた人がいたとします。
次に、日焼け止めを塗ったところに300というエネルギーの紫外線をあてて、わずかに焼けたとすれば、300/100=SPF3となります。
飲む日焼け止めのSPFをPLの実験論文で検証
PLは、もともとはスペインで開発され、日本でも人気の「ヘリオケア」という商品に、フェーンブロックという名称で配合されているようです。
このPLの効果について、UVBに対してどれくらいの効果を示すか、詳細に検討された2つの実験があります。
- PLを1日摂取したときの効果
- PLを28日摂取したときの効果
PLのUVB防止効果|1日摂取の場合
以下では、PLを1日摂取したときに、UVBによる赤みをどれくらい防げるかが、写真つきで報告されています。
以下、実験の簡単な流れです。
- 22人の健康な男女、スキンフォトタイプⅠ〜Ⅲに実施
- 1日目に被験者はPLを食べない状態で背中にUVBを照射
- 24時間後に肌の赤みを確認
- 3日目にUVB照射の2時間前と1時間前に240mgのPLを食べ(合計480mg)、UVBを照射
- 24時間後に肌の赤みを確認
以下、結果です。
引用:The impact of oral Polypodium leucotomos extract on ultraviolet B response: A human clinical study
実際の日焼け止めの試験では、背中に6つのポイントに、強さの異なる紫外線を当てます。
1→2→3→4→5→6の順に紫外線を強くしていき、わずかに赤みが出たときの紫外線強度(MED、最小紅斑量)を計算に使います。
さて、左側の写真はPLを飲む前に紫外線を照射した結果です。
この被験者は、1のポイントでわずかに赤くなっており、ここにあてた紫外線量は100mJ/cm2と記載されています。
次に、右の写真はPLを飲んだ後に紫外線を照射した結果です。
2のポイントでわずかに赤くなっており、ここにあてた紫外線量は150mJ/cm2と記載されていますす。
つまり、SPFに直すと、150/100=SPF1.5となります。
なので、推定にはなりますが、noUVもSPF1.5くらいの効果と言えます。
PLのUVB防止効果|28日連続摂取の場合
こちらは、PLを毎日1000mg、28日間飲み続けたときの実験です。
こちらは、MEDではなく、MEDがどれくらい改善したか、改善率で示されています。
線グラフの一番右が28日後の結果ですが、改善率が約20%となってます。つまり、PLを連続で飲み続けると、SPF1.2ほどの効果とわかります。
SPF1.2の日焼け止め効果はどれくらい?
日本人のスキンフォトタイプ(日焼けしやすさを表す肌質分類)Ⅰ〜Ⅵのうち、Ⅲとされており、平均MEDは300J/m2(30mJ/cm2)とされています。(参考:http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/glossary.html)
夏の正午の炎天下(UV index 8)では25分くらいで炎症を起こすイメージ。ちなみに紫外線に敏感なスキンフォトタイプⅠの人は200J/m2なので、夏の正午の炎天下で17分くらいで日焼けするという見積もりです。
飲む日焼け止めの効果はSPF1.2だとすると、20分で日焼けしていたのが、24分になるほどの効果はあるかもしれません。
しかし、これだけで日焼け止めになるとは思えませんので、塗る日焼け止めは必須と考えます。
実際、飲む日焼け止めメーカー対して、アメリカでは警告が出ています。
飲む日焼け止めに対してFDAは警告を発信
アメリカでも飲む日焼け止めが販売されていますが、2018年5月、米国FDAは、飲む日焼け止めを販売する4つの会社に対して警告書を送りました。
原文は英語で長いので要約しました。
[su_note note_color=”#ffffff”]我々は、FDAの安全性と有効性の基準を満たさずに、日光曝露による害から消費者を保護することを証明していない、栄養補助食品としてラベルされた錠剤やカプセルを違法に販売している企業に警告書を送りました。
Advanced Skin Brightening Formula, Sunsafe Rx, Solaricare, Sunergeticと呼ばれる商品を販売している企業は、
- 栄養補助食品が日焼けを防ぐ
- 日光による皮膚の早期老化を軽減する
- 皮膚がんのリスクから保護する
という、誤った安心感を消費者に与えることで、人々の健康を危険にさらしています。
これらの企業は、自社製品に関連するすべての法律違反を修正するように指示されました。
消費者は、証拠のない主張をする悪質な会社には注意する必要があります。
日焼け止めを置き換えることができる錠剤やカプセルはありません。
翻訳:すみしょう with google[/su_note]
したがって、いわゆる飲む日焼け止めを飲むだけで、日焼けを防ぐことができると考えるのは絶対にやめるべきだと思います。
ただし、飲む日焼け止めでMEDが上昇するというのは、焼けにくい体質になるということなので、飲む日焼け止めだけはNGだけど、塗る日焼け止め+飲むなら良いと思います。
抗酸化サプリとしては良いかもしれません
いわゆる飲む日焼け止めは抗酸化サプリとしては良いかもしれません。
紫外線を浴びると活性酸素種が発生し、シミ、シワの原因等になります。PLには、抗酸化力が高いポリフェノールである、クロロゲン酸、クマル酸、バニリン酸、コーヒー酸及びフェルラ酸が含まれており、紫外線ダメージを多少ケアできると思います。
なので日焼け止め効果を期待するというよりかは、紫外線で受けたダメージを多少ケアできる美容サプリとして摂取しましょう。
飲む日焼け止めというワードが乱立しているのは誰のせい?
ちなみに、消費者の間では、「飲む日焼け止め」という言葉が浸透しているのでしょうか。
PLを開発した本家である「ヘリオケア」のメーカーであるCantabria labsのホームページを見ても、飲むだけでOKの日焼け止め、などとは書いてないです。
日焼けによるダメージに対する肌の抵抗力を高めるのに役立ちます。
それは、損傷を減速させそして修復するのに寄与する成分を含み、従って光老化、しみの出現および日光曝露から生じる他の損傷に対して保護する。局所光防護を補完する。 局所的な光防護作用が及ばない領域(目、粘膜、髪の毛など)に達する全身表面を均一かつ均一に保護します。
参考:https://www.heliocare.es/fotoproteccion-oral/heliocare-ultra-d-capsulas/
となると、スペイン本家ではなく、日本に輸入されてきたときに、誇大広告が打ち出され始めたことが原因と考えられます。
広告はある程度誇大になるのは避けられませんが、日焼け止めが不要!みたいな誤解をさせるメーカー、メディア、インフルエンサーがいたために、このような事態になっているものだと思います。
その中でも、特に厄介なのがお医者さんの推薦です。
お医者さんの中には、
「日焼け止めを塗るのが苦手な人はこのサプリを飲みましょう」
と、通常の日焼け止めが必要ないかのような誤解を与える記載をしていることもあります。
推薦するのであれば、
「塗る日焼け止めを絶対に使いましょう。その上で、紫外線によるダメージをケアする抗酸化サプリとして飲みましょう。」
くらいの表現にすべきであり、日本でも誤解を生じる広告表現は行政の指導が入ることを望みます。
まとめ
- 飲む日焼け止めは1ヶ月飲んでSPF1.2くらい
- 塗布する日焼け止めを塗った上で飲むならアリ
- 塗布する日焼け止めは絶対使おう
飲む日焼け止めは、情報氾濫&誇大広告によって、正しい情報がわかりにくくなっています。
塗る日焼け止めは絶対塗りましょう。